「療育」は指導や訓練ではなく「引き出すこと」

こんにちは。

発達支援アドバイザーの茂木厚子です。

「うちの子、どうして他の子たちと違うの?」と、焦る親御さんからのご相談を受けています。

誰でも、自分が少数派に属しているのではないかと感じると、とても不安になるものです。だからこそ、個別に寄り添う「親への支援」がとても重要なのだと実感しています。

カリフォルニアでの発達支援は、子どもを支える家族へのサポートが主流だとお伝えしましたが、やはり親御さんが心身ともに元気でなければ、子どもを支えることさえも、ままならない状況になると思うのです。

「自分自身が幸せでなければ、人を幸せにすることは難しい」のと同様、まずは親御さんが安心して過ごせるようなアプローチ方法を模索することから始まります。

セラピストが家庭訪問して、親御さんが何に困っているかを聴き取りながら、どんな環境がその子どもに最もふさわしいのかを一緒に考えていきます。

そこで大切にしていたことは、「発達支援はユニークである」という視点。

子どもを、ある決められた「療育プログラム」の型にはめるのではなく、その子どものためにプログラムが作られていくのです。

「それぞれの子どもたちに、それぞれのオーダーメイドの支援を」といった発想です。

例えば、「子どもとのお散歩が大変すぎて永遠に家に帰れない。どうしたらスムーズに歩いてくれるのか。」というお悩みのママがいれば、セラピストがお散歩に同行しながら、その子のお散歩のパターンがどのように大変なのかを見て、どのような導きアプローチが有効なのかを提案し、実践して見せてくれたり、

「子どもが落ち着かなくて、とてもとてもレストランでの食事が楽しめない」と言えば、セラピストが一緒にレストランへ出かけていき、どんな方法があればその子どもがそこに居やすいのか、アドバイスをくれたり、

「子どもに偏食があり、ご飯を食べなくて困っている」と言えば、食事の時間に合わせて訪問をしてくれたり、

「子どもの言葉の発達が遅くて心配だ」と言えば、コミュニケーションを広げる方法やことばのやりとりの仕方、声かけの仕方など、スピーチセラピーを実践してみせてくれたり、絵カードコミュニケーションの方法を教えてくれるのです。必要な絵カードやボードなども無償で提供されます。

子どもの発達を学ぶ、親向け勉強会も夫婦で受講できるように夜の時間帯に開催されています。両親が共に学べる機会を設けています。専門家による託児サービスもあるので、子どもも連れて行けるようになっています。

更には、日中、一時も目が離せない難しい子育てをして疲労が溜まっている親のために、週に4時間程度のレスパイトサービスが受けられる制度もあります。親がリフレッシュするために使える自由な時間が保証されているのです。それだけ親が抱えるストレスが子どもの発達に影響することがわかっているから、そこに予算がつけられるのでしょう。貴重な4時間・・・カフェでのんびり読書をしてもいいし、映画を観てきてもいい、美容院やマッサージなどでリフレッシュしてもいいし、昼寝をしてもいい時間。親に優しい制度です。優しさを受け取ると、子どもにも優しくなれるとあるお母さんが仰っていたのを思い出しました。本当にそうですね。子どもに穏やかに過ごしてほしいと願う前に、大人がまず穏やかに子どもに接しなければなりませんね。

こうした福祉の支援サービスが全て公費でまかなわれているのですから、経済的にも精神的にも日本の親御さんから比べて負担が少ないと言えます。これが家族丸ごと支援の重要なところだと思うのです。

子どもの発達に課題が見えた時、365日子どもと一緒に生活を共にしている親が、できるだけ早期に介入し、発達について学ぶ機会があれば、日々適切な対応をすることができるので、子どもだけ通う療育スタイルよりもはるかに高い効果が期待できます。

もちろん、米国でも通うスタイルの療育(早期介入施設)はありますが、必ず、親子で通所します。支援会議には親だけでなく、保育士、幼稚園や学校の担任、医師、セラピスト、ベビーシッター、ケースワーカーなど、その子どもに関わる大人はみんな出席します。その子どもの支援情報の共有は必須です。

親も子どもと一緒に療育現場で楽しく遊びながら、そのノウハウを学ぶことができるのです。日々どのような療育アプローチができるのかを知ることができ、わからないことがあればその都度セラピストに相談するチャンスがあります。

このような支援スタイルは、なによりも親の不安解消につながりますね。親が安心して子育てができれば、子どものパニックや行動の問題、マルトリートメント(厳しすぎる不適切な養育)、虐待などの防げにもなるのではないでしょうか。

子どもを知ること、環境を変えること、不安を取り除くこと、親が笑顔でいること、その子を変えようとしないこと、「普通」と言う基準をとりはらうこと、そして、たくさんのやさしさと「快」。

療育は、受けるものでもなく、指導するものでもなく、ただただ…引き出すこと。待つことも大事。

なによりも、Sense of Humor !!

written by Kids Sense ~ Early Intervention ~ Home based Therapy ~ Floortime ~